リアル ホットロード!家出娘とシャコタンと喧嘩とシンナーの江ノ島。

よ〜うやく形になった。江ノ島のエッちゃんを雑誌に掲載できた。「ホットロード」のモデルの話を。まぁ、2ページ、1000文字位だしほんとに簡単な事しか書けないけど。家出とシャコタンと喧嘩とシンナーの江ノ島。ずっと聞いてきた江ノ島が走れなくなった話。雑誌では書ききれないことを少しここで書こうかな。エッちゃんとはもう25年以上前に山下公園で俺のツレがロカビリーチームで遊んでて、そこで会った。あまり当時のことは覚えていないけど、そんなふうにして当時の遊び仲間になったんだと思う。ヤンキー上がりの独特の雰囲気は他の人に比べてやはり存在感があった。気さくな性格でみんなの人気者だったのを覚えてる。それからは仲良くなってなんだかんだ毎日遊ぶようになった。 あの頃は遊びのジャンルがいっぱいあった。ロカビリー、サイコビリー、パンク、ハードコア、レゲエ、ヒップホップ、スケーター等、乗り物で分けるともっといっぱい。そういうジャンルをミックスした感じの人が面白かった。ハーレーのFLで革ジャンに革パンのセットアップなのに、脱ぐとドレッドでレゲエだったり、そういう感じ。エッちゃんのファッションはその中でも抜群だったな。パンチパーマに鋲ジャンで絵柄が風神と雷神。ハードコアパンチ!とか言って。家に遊びに行くとドラエモンの座椅子に座って紅茶はウェッジウッドの器で飲む。家の壁には菊水の旗とパンクの仲間の写真と印象派の風景の絵が貼ってあるとかで。そう、何年振りかに家に遊びにいくと昔と変わらないインテリアのなかに「映画ホットロード」のポスターがあった。

「あれ、みました?」

「あんな綺麗な話じゃねぇよ、もっと残虐で怖かったよ」

俺が知り合った頃のエッちゃんはもう江ノ島を卒業した後だ。荒れた中学時代を経て、彼は家出して江ノ島に居着く。グラチャンが全盛の頃1986~1989年とか。チャンプロードで企画「湘南グラフィティ」が連載していた頃だ。この企画はまず名前がカッコイイ。図書館で見たけど、毎日のように江ノ島にくる子達を月刊で巻頭連載している。改造車に箱乗りの女の子がピースしているような写真。もちろんエッちゃんはその中心にいた。家出して駅の端で寝泊まりしていくなかで、友人ができて近くのアパートに家出仲間と住む。当時の江ノ島は毎日がお祭りで、夜になると国道134号線が車やバイクのライトで照らされて、ずっと遠くの海岸線まで見えて、それがとても綺麗でいまでも印象に残っていると。そんななか、10代の家出少年と家出少女が恋に落ちて、付き合うことになる。それが「ホットロード」のモデルの2人となったようだ。彼の言葉使いは悪くて、わざと彼女(ハルミ)のことを「おい、ブス」とか「ハルマキ!」とか呼んでいたそうだ。雑誌チャンプロードで江ノ島が注目され、地方からもどんどんとグラチャン族とギャラリーが集まってくるようになる。グラチャン族とは車を改造して、サーキットに行って走んで楽しむ人々。そういった着飾った車(ほぼシャコタン)やバイクが江ノ島のローソン前にくるとエッちゃんが身振り手振りで盛り上げる。それに応える車がエンジンでコールをキッてくる。湘南コールという独自のスタイルも生まれた。一日中そんな感じだったみたいだ。江ノ島が134号線がシャコタンとギャラリーであふれてる。ウンコ座りが格好よくて、シンナーを吸ってナンパする日常。

「シンナーって、歯が溶けるんですよね?」

「シンナーじゃ歯は溶けねぇよ、甘いもの食って歯を磨かないからだよ、まぁ俺の前歯はセラミックだけどな(笑」

だが、ついにそんな江ノ島が走れなくなる日がくる。チャラいイメージがあった江ノ島は「ホットロード」でも描かれているが、流行るにつれて東京から喧嘩目的の輩が襲撃に来たり、族狩りが湘南を怖がらせていくようになっていった。エッちゃんも何度も拉致られたりしたようだ。「俺なんかチャラく見られたんだろうな〜、あいつらマジだから怖えんだよ、まぁやる時はやってんけどな」と。そんななか、決定的な事件が2つ起きた。発砲事件と片瀬江ノ島駅前暴走注意事件という2つの殺人事件で警察は徹底的に江ノ島から車や単車を締め出しにかかる。江ノ島大橋入り口ににゲートが設置されて夜間は入れなくなった。雑誌で流行りになって、輩が大騒ぎして収集がつかなくなって、事件が起きて人が離れていく。そんな江ノ島があったようだ。「漫画ホットロード」の最後は、ハルヤマが和希に向かって「おい、ハルマキ!」と声をかけるシーンで終わっている。

         江ノ島のエッちゃん/ 実話ナックルズ/2019年8月号   レディースが湘南にいた時代/実話ナックルズ/2019年8月号